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君死にたもうことなかれ 与謝野晶子

 中学3年の期末試験の日、不覚にも腕時計を忘れた事があった。 私の通っていた中学・高校は、規律正しいカソリックの女子校であったため、 時間を気にせず授業に取り組むという事で、教室に時計がない。 「まいったナー。」と思ったけれど、仕方がない。 丁度、試験官がクラス担任の体育のY先生であったので、挙手し 「先生、後何分ですか?」 と伺うと、 「あなたには教えられません!」 一瞬クラス全員が、テスト用紙から顔を上げ、私に注目した。 『あなたには教えられない。』という事は、他の生徒だったら教えるわけ? その日1日、私は腹時計で試験を受けた。

 在校中、Y先生は私と一度も笑顔で話をしてくださる事がなかった。 ある日の面談で、Y先生は 「私、あなたがすごく嫌いなのよネ。あなたを見ていると、自分の妹にすごく似ていてイヤなの。 いつも目立つし、両親の愛情を一身に受けてのびのびしていて、自信あり気で不愉快よ。」  正直言って、悲しいと思わなかった。 何だ、そんな事か。もうイイや。ハッキリ言ってもらえてスッキリした。 「かわいそうだナー。」 先生が惨めに思えた。

 それから間もなく、クラスで成績優秀、品行方正と言われている友人のMさんが急に私を避けるようになり、口もきかない。 「どうしたの?何かあったの?」 と尋ねても、返事も返してくれない。そうした友人が何人も出てきた。 「フーン。」 今まで気の合った友人が友達をやめてしまうのは悲しいけれど、仕方ない。その程度の友情だったと思うしかない。  そしてとうとうある日、校長様に呼び出された。 「石塚(旧姓)さん、あなたは何処にいても、何をやっても目立つ人です。 それを良い事だと思って下級生が真似をする。言動に注意いたしましょう。 私立の学校は、校風に合わなければいつでも辞められます。」 これって、学校を辞めろって事じゃない?

 確かに私は、俗にいう『目立つ存在』ではあった。 演劇部で男役(何で男役ばかりなのよ!)を演じていたせいで、 放課後靴箱を開けると、下級生からの手紙が分厚い封書で毎日ドサッと落ちる。 「お姉様、いつもお姉様を見つめています。何処にいても、お姉様の後を追っています。」(これじゃトイレも入れない。)

 でも私は、学校を辞めなかった。 自分自身が決して悪い事をしていると思わなかったから。 おとなしくて成績が良くても、影で悪いと言われている事をしている友人はたくさんいた。 それはそれでもよい。 自分は自分。 人は人。 私はある意味、開き直る事にした。 目立とうと思っているわけではないけれど、何処にいても、何をしても目立つなら目立つ事を好きになってやれ! もっと目立ってやれ! 出る釘は打たれる。打たれたらもっと出てやれば良い。

 今思うと、これは『イジメ』という事だったのかもしれない。 しかし私は、自分勝手な人間だから、イジメられてるとは思わなかった。 「勇気を出して、両親に相談して下さい。」 「あなたを愛してる人がいる事を知って下さい。」 と、おっしゃる方もいるが、辛い思いをしている優しいあなたには、そんな事はわかっていると思う。
 愛してくれている両親に心配はかけられない。でも、これから先の事を考えると、希望もなくなり、 死んだら楽になるかもしれないと、どんどん暗い淵にはまり込んでいく。 でもチョット待って!! 死んでも花見は咲かないよ。 死んだら、イジメた人達が後悔するかもしれないなんて事はないよ。 あなたが死んだ後、イジメていた人達が、おいしい物を食べたり、好きな人ができて恋愛したり、 楽しそうに笑うなんて許せないじゃない?あなたにだって、当然その権利はあるはず。 神様は決して存在価値のない人間を、この世に送り出す事はない。  私の父方の祖母は、父が殴られて帰って来ると、ゲタを渡して 「ヤラれたら、ヤリ返して来い!」 と言ったそうだが、イジメる人はあなたより人間の格が下だと思え!そんな人間を相手にするな! そんな人と友人になる必要もない。

「この世ひとりの君ならで 君死にたもうことなかれ」

 戦争中、若い多くの人達が死にたくなくても死んでいった。 それは人の心を打つものがある。私は『死』を望むなら、自分の信念の為に死にたい。 けれど『死』を選ぶ事は、美しい事だけでは決してない。その瞬間は、痛いし、苦しい。私には怖くてできない。 死を選択する程の勇気があるなら、生きていくことを選ぶ事もできるはず。 自分に自信を持てるものを勇気を持って探してみよう。優しいあなたなら、きっとできる。 そうすれば、明るい未来の扉から、希望の光が少し見えてくるよ。

 後年、クラス会でY先生にお会いした。 お互い相変わらず話を交わす事はなかったが、Y先生は恥ずかしそうに 笑みながら挨拶をされた。 先生もだいぶお年をとられて、以前より小さく、結婚されていないせいか、 教え子達に囲まれていても、私には寂しそうに見えた―。 人生なんてそんなものだよ。

ちづる 名前: ちづる
生年月日: 年齢不祥(ということにしておいて)
趣味: パチ○○(大きな声じゃ言えないが)
好きな食べ物: お寿司・ライチ(楊貴妃が好んで食べたから)
好きな時間: 仕事が終わってビールを飲む時
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